これまでずっと現金主義を貫いてきた。財布からお札を出し、小銭入れをジャラジャラとかき分けてぴったり支払う。それが当たり前だったし、わざわざスマホ決済やクレジットカードを少額の買い物で使うなんて、設定も面倒だし何だか気恥ずかしいとさえ思っていた。
「2、300円の買い物でカードなんて使えるかよ」
そう頑なに思っていた過去の自分に教えたい。今や私は、クレジットカードのタッチ決済の虜(とりこ)である。
きっかけは、少しでも時代の波についていこうという軽い気持ちだった。試しに手持ちのクレジットカードでタッチ決済をやってみたところ、あまりの拍子抜けするほどの早さに衝撃を受けた。財布からカードを取り出すすらも省くため、いまやパスケースに入れて首からぶら下げている。コンビニでもスーパーでも、首から下げた相棒を「ピッ」とかざすだけ。
最近の決済市場の調査を見ても、クレジットカードの利用方法として「タッチ決済」のシェアが急激に拡大しており、コード決済からタッチ決済へ軸足を移す人が増えているという。世の中の多くの人が同じ便利さに気づき始めているわけだ。よく考えてみれば、財布からわざわざ小銭を出したりお札を数えたりするよりも、カードをかざすだけで一瞬で決済が完了する方がどう考えても合理的である。
このスタイルに行きついてから、私の日常の買い物におけるストレスは劇的に軽減された。何より素晴らしいのは、買い物のハードルが低くなったことだ。今までなら「200円や300円の買い物でカードや電子決済を使うのは何となく気が引けるな」と小銭を探していたような細々とした会計でも、今では迷わずタッチ決済を使っている。
そして、最大のメリットは何といってもお釣りの小銭が圧倒的に増えないことである。買い物のたびにポケットや財布を重くしていたあの小さなストレスが、嘘のように消え去った。帰宅してから小銭入れをジャラジャラと別の容器に移す手間もなくなり、財布の中身がすっきり軽くなると、なぜか心まで軽くなるから不思議だ。
「時代についていこう」となんとなく始めた小さな変化だったが、今では日々の暮らしの知恵として手放せない快適さになっている。頑なに現金にこだわっていたあの頃の自分を少し笑いつつ、今日も首から下げたパスケースを軽快に揺らしながら、小銭いらずのレジをスマートに通り抜けている。

