夜空に浮かぶまんまるの月。
日本人にとって、その中にうさぎがいるのはほとんど常識だ。
子どもの頃から絵本やアニメで見てきたし、「うさぎが餅をついている」なんてフレーズは季節の行事にもよく登場する。
「え、あそこにうさぎがいるでしょ?」って自然に思えるくらい、すっかり刷り込まれている。
けれど、実はこれ、日本や中国、韓国など東アジア特有の見え方だ。
同じ月を見ていながら、世界中の人々はそこにまったく違うものを見ている。
うさぎじゃなくて、カニだったり、男の顔だったり、カエルだったり。
月はただの天体ではなく、その文化の想像力を映し出す“鏡”なのかもしれない。
■ 日本・中国・韓国:うさぎが餅をつく
これはアジア圏では定番の見え方。
中国神話の「嫦娥(じょうが)」と「玉兎(ぎょくと)」が起源で、日本でも「うさぎ、うさぎ、なに見てはねる〜♪」の童歌に登場する。
月の模様の“耳と胴体”っぽい形を、餅をつくうさぎと見立てる想像力が、風習として根付いた。
■ メキシコ・中南米:カニ、あるいは女神
メキシコでは月にカニがいると言われる。
模様の横長の部分をハサミに見立てているらしい。
また、アステカ神話では月の女神コヨルシャウキが登場するなど、“月に神がいる”という感覚も根強い。
■ インド:鹿
インドでは、月の中に鹿の姿が見えるとされる。
これはヒンドゥー神話で、月が鹿の姿で現れるという伝承があるから。
どこがどう鹿なのかは…正直見えづらいけど、「そういう目」で見れば、きっと見えてくる。
■ ヨーロッパ:男の顔(“Man in the Moon”)
ヨーロッパでは、月には男の顔があるという「Man in the Moon」伝説が知られている。
イギリスでは、薪を盗んだ男が罰として月に送られた…という民話もあり、なんともシュール。
うさぎや鹿と比べて、こっちはちょっと“月の闇面”を見ている気もする。
■ アメリカ先住民:カエル、鳥、精霊…
アメリカの先住民の文化では、月の中にカエルや鳥、あるいは精霊の姿が見えるとされている。
どの動物が見えるかは部族によって異なり、自然信仰や精霊信仰が背景にある。
つまり、月は“生きた存在”として、部族ごとに意味づけされていたわけだ。
■ 月は文化を映す鏡
こうして見てみると、
月の模様そのものは変わらないのに、そこに見えるものが国や文化によって違うって、なんだか不思議だ。
> 月は、誰もが見上げるけれど、
見えているものは、それぞれ違う。
ロマンチックに言えば、月は「夜空に浮かぶ文化の鏡」。
見ているのは“模様”じゃなくて、その人が育った物語なのかもしれない。
たまには月を見上げて、自分には何が見えるか考えてみるのも楽しい。
今夜はうさぎ? それともカニ? それとも…あなた自身?

