台所の奥から、見覚えのある瓶が出てきた。ラベルは少し色あせている。中身は、はちみつである。
しかも、スプーンの跡がある。つまり、私はこれを一度食べたことがあるらしい。
そして、5年ぶりに食べてみた。……おいしかった。
この体験は、はちみつが「腐らない食品」であることを証明する一例である。
はちみつは腐らない食品である
はちみつは、極めて保存性の高い食品である。
その理由は以下の通りだ。
• 水分量が少ない:はちみつの水分含有量は約17〜18%と低く、微生物が繁殖しにくい。
• 高濃度の糖分:糖分が多いため、浸透圧によって微生物の細胞が破壊される。
• 酸性のpH:pHは約3.9前後であり、細菌にとっては不快な環境である。
• 天然の殺菌成分:グルコン酸や過酸化水素など、抗菌作用を持つ成分が含まれている。
これらの性質により、はちみつは腐敗しにくい食品として知られている。
実際、古代エジプトの遺跡から発掘されたはちみつが、数千年経っても食べられる状態だったという記録もある。
賞味期限と保存方法
市販のはちみつには賞味期限が記載されているが、これは「風味の保証期間」であり、安全性とは異なる。
保存状態が良ければ、数年経過しても問題なく食べることができる。
保存のポイントは以下の通りだ。
• 常温保存が基本である。冷蔵庫に入れる必要はない。
• 直射日光と高温多湿を避ける。
• 密閉して保管することが望ましい。
• 結晶化しても品質に問題はない。湯煎すれば元に戻る。
過去の自分との再会
5年前のはちみつは、確かに美味しかった。
腐らないという雑学は、ただの知識ではなく、実体験として証明された。
そして何より、「一度食べた形跡がある」という事実が、過去の自分との静かな再会のように感じられた。
はちみつは、時を超えて甘さを保つ。
人間の記憶も、そうであってほしいものである。

