お彼岸に「おはぎ」を食べる風習は、多くの人が知っているだろう。
しかし、ただ漠然と「昔からそうだから」と受け継いできただけで、その意味を深く考える機会は少ないのではないか。
私自身もそうであった。
だが改めて調べてみると、そこには意外に奥深い背景が潜んでいた。
赤い小豆と魔除けの力
まず注目すべきは、小豆の赤い色である。
古来より赤は邪気を払う色とされてきた。
そのため、赤い小豆で包んだ餅を供えることは、先祖の霊を慰めると同時に、魔を寄せつけぬ祈りの行為でもあった。
単なる甘味ではなく、いわば「食べる護符」であったのだ。
季節と花にちなんだ名前
春には「牡丹」にちなみ「ぼたもち」、秋には「萩」にちなみ「おはぎ」と呼ぶ。
同じ菓子でありながら、移ろう季節を言葉の上で映し取る日本人の感性が、ここに表れている。
名に風情を添えることで、ただの食物が一挙に年中行事へと昇華するのだ。
こしあんとつぶあんの違い
さらに興味深いのは、あんこの作り方に季節の違いを反映させていた点である。
春は小豆の皮が硬いため「こしあん」にし、秋は収穫したてで柔らかいので「つぶあん」にしたという。
小豆の旬に寄り添った生活の知恵が、食文化の中にさりげなく息づいている。
まとめ
お彼岸におはぎを食べるのは、単なる習慣にあらず。
そこには 魔除けの信仰、祖先への供養、季節の風雅、そして暮らしの知恵 が織り込まれていた。
知っているつもりのことも、改めて調べてみれば新たな発見がある。
おはぎ一つにも、先人の思いと文化の厚みが込められていたのである。
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