失敗すると「全部ダメ」に見えてしまう不思議──白黒思考の正体

人生・暮らしの考察

失敗すると「全部ダメ」に見えてしまう不思議

ちょっとした失敗で「もう全部ダメだ」と思ったことはないだろうか。

たとえば、テストで一問間違えただけで「自分は頭が悪い」と感じたり、仕事で小さなミスをしただけで「もう信用がなくなった」と考えてしまうことがある。

こうした考え方には心理学で名前がついている。

「白黒思考」あるいは「全か無か思考」と呼ばれ、物事を成功か失敗か、極端に分けてしまうクセのことだ。

一部がうまくいかないと「全部が失敗」と見なしてしまう。

実際にはグレーの部分が多いのに、つい極端に考えてしまうのである。

日常でよくある白黒思考の例

  • 仕事で書類に小さなミスを見つけると「この仕事は台無しだ」と落ち込む
  • 試験で1問間違えると「自分はもうダメだ」と感じる
  • 料理で少し焦がしてしまっただけで「今日は全部失敗」と思う
  • メールで誤字を見つけると「やっぱり自分は不注意だ」と落ち込む

これは決して特別なことではない。

心理学では、真面目で責任感のある人ほど陥りやすいとされる。

アメリカカの精神科医アーロン・ベックは、うつ病の患者を観察する中でこうした認知の偏りを発見した。

のちに認知行動療法(CBT)の中核概念として用いられ、日常生活でも誰にでも起こり得る思考パターンだとわかっている。

失敗をラクに捉えるコツ

失敗は失敗として認めつつ、全体と混同しないことが大切だ。

「全部ダメ」と思い込む必要はなく、あくまで一部分の出来事に過ぎないと捉えることが心を軽くする。

例えば、仕事で書類のミスを見つけても「一部を直せばいいだけ」と考えるだけで、負担はずいぶん軽くなる。

私自身はずぼらな性格なので、「まあ失敗は失敗、それだけの話」と片付けてしまう。

しかし、このくらいの軽さで考えられると、心がずいぶんラクになる。

真面目で完璧主義なタイプの人も、「失敗は失敗、一部分のこと」と意識するだけで、日常のネガティブ思考を少し和らげることができるかもしれない。

心理学的に根拠のある考え方を少し借りるだけでも、日常の小さなネガティブに気づきやすくなる。

「自分は白黒思考にハマっていないか?」と意識することが、思いがけず心の軽さにつながるのだ。

失敗は勉強だと思えば前に進むには十分な価値があると思う。

経験こそ財産。一銭にもならない。けれどプライスレス。

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