メキシコのユカタン半島西部に位置するカンペチェ。
街は美しく整備され、観光客に優しい雰囲気だ。
街の中心部は歴史を感じさせる建物が並び、歩いているだけで時間がゆっくりと流れていくように感じられた。
城壁と城門が守るカンペチェの歴史
カンペチェは海賊から街を守るために作られた要塞都市として知られている。
街を囲む城壁や立派な城門は、まるで時代を超えた防御の証のように堂々とそびえていた。
要塞の内部には大砲や当時の武器などの展示があり、歴史の重みを肌で感じることができる。


初めて見るラッパ型ピストルの衝撃
要塞内の展示物の中で特に印象に残ったのが「ラッパ型のピストル」だ。
アニメや映画で見たことはあったが、実物を目の前にすると、その精巧さと独特の形状に思わず見入ってしまった。
歴史の教科書で見るだけでは伝わらない、当時の銃器の雰囲気が肌で感じられた。
タクシー運転手とのナマコ談義
要塞へ向かう道中、タクシーの運転手が話してくれた面白い話がある。
以前、メキシコ付近に日本の船がナマコを取りに来ていたというのだ。
日本ではナマコは一般的だが、運転手曰くメキシコ人は食べない。
だからゴミ同然のナマコを1キロ当たり日本円で約50円で買い取ってくれたと言っていた。
中国では高級食材として珍重されていることを伝えると、運転手は「そうだってな~!」と驚いた様子だった。
要塞の入り口で見つけた世界の紙幣
要塞の入り口には不思議な展示があった。世界中の紙幣がケースに収められ、整然と並べられているのだ。
その中には日本の野口英世の肖像が描かれた紙幣もあり、メリダを訪れそこからの足跡をたどり損ねたことを思い出した。
静かな夜のレストランで聞かれた一言「Do you like tesa?」
カンペチェ滞在中のある晩、ホテル近くのレストランに入った。こぢんまりとした店内は静かで落ち着いていた。
メニューを持ってきたウェイトレスに、「ここの郷土料理はあるか?」とスペイン語で尋ねると、まずはこちらが外国人なので無難に「タコス」を勧められた。だが、すでに何度も食べていたので断ると、「じゃあ、こっちはどう?」と別の料理を勧めてくれた。
それを注文し、食後にはコーヒーを頼んだ。
少し離れた席には、年配のアメリカ人観光客のグループが座っていた。
ウェイトレスはそのテーブルも担当していた。
そして、帰ろうとしたそのとき、突然彼女が英語で近づいてきて言った。
「Do you like tesa?」
“テサ”? 料理名だろうか? 英語で訪ねてきたのでこっちも英語で「tesaって何?」と聞き返しても、彼女は繰り返すだけ。今度はスペイン語で「tesaって何?」と尋ねると──
「Pastel(ケーキ)よ」と笑顔で答えた。
要するに、デザートをすすめてくれていたのだ。
おそらくアメリカ人とデザートのやり取りをしたのだろう。
早口だと「dessert」が「tesa」に聞こえるかもしれない。
ただ私もそこまでの英語上級者じゃないので理解することが出来なかった。
ただ私は店に入ってから一度も彼女と英語で話していないのだ。
たぶん私が外国人なので気を聞かせて英語で聞いてきたのだろう。
タイミングが良ければ頼んでいたかもしれないが、すでに帰り支度をしていたので、丁寧にお断りして店をあとにした。
このちょっとしたやりとりも、旅先でしか味わえない貴重な思い出のひとつとなった。

カンペチェで感じた歴史と生活の調和
カンペチェは観光地としての整備が進んでいるものの、城壁や要塞といった歴史的遺産がしっかりと保存されていることで、訪れる人々に深い歴史体験を提供している。
さらに街の生活もゆったりとしており、歴史と現代がほどよく調和した場所だと感じた。

