あのすくい網に、なぜか夢中になる
夏祭りといえば、屋台。
焼きそば、ヨーヨー釣り、そして忘れてはならないのが金魚すくいだ。
あの小さなポイ(すくい網)で水面を追いかける瞬間、
なぜか人は年齢を忘れて真剣になる。
だけど──その金魚たち、実は“ほぼ同じ種類”って知っていただろうか?
金魚すくいの金魚は「和金」がほとんど
金魚すくいで見かける金魚の多くは「和金(わきん)」という品種である。
細長い体つきに、フナのような尾びれ。
赤や白の体色が一般的だが、黒い斑点や模様が入っている個体もいる。
「金魚」と一口に言っても、琉金、出目金、ランチュウ……と様々な品種がある。
だが祭りで使われるのは圧倒的に“和金”が多い。
その理由はシンプル。
丈夫で安くて、元気に泳ぐからだ。
ちなみに、和金はフナに近い品種から品種改良されたもので、
環境が良ければ、10年単位で生きることもある。
すくった金魚、実はとんでもなく大きくなる
金魚すくいの金魚、あれで「大人」ではない。
育て方次第では20cm以上のサイズになることもある。
実際私も昔熱帯魚を飼ってたことがあり、
あまってた水槽に祭りで持ち帰った金魚を熱帯魚同様ヒーターを入れ飼育したら、
25 cmぐらいになったことがある。
家で静かに育てていたつもりが、
ふとした瞬間、「これはもうフナでは?」と思うことすらある。
あの赤い魚に、なぜ人は惹かれるのか
金魚は、中国の風水では「富と繁栄の象徴」とされ、
日本でも古くから“縁起物”として親しまれてきた。
赤は「魔除け」の色でもあり、
水に揺れる赤い魚は、どこか人の心を落ち着かせるものがある。
だからこそ──
あの小さな水槽の中に、夢中になって手を伸ばしてしまうのかもしれない。
すくうのは、命か、夏の記憶か
一匹すくってはポイが破れ、
水しぶきの向こうに、金魚が泳いでいく。
それでも、また手を伸ばす。
そんな風景が、今年もどこかで続いている。