「タコス」と聞いて、思い浮かべるのはどんな形だろうか。
カリカリの殻にレタスやチーズ、トマトがぎっしり入って、パリッと二つ折りになっているやつじゃないだろうか。
でも実は、それはアメリカ風のタコスであって、メキシコ本場のタコスとは別物である。
メキシコに住んでいたとき、初めて本場のタコスを見たときは「え、これがタコス?」と素直に驚いた。
メキシコのタコスは二つ折りじゃない
メキシコのタコスは、基本的に二つ折りになっていない。
直径15cmほどの小さなトルティーヤに具材をのせた状態で出てくる。
ぱっと見は、まるで小さなピザのようである。
具材がてんこ盛りなので落ちやすく、食べにくいというのが正直な感想である。
ただし、その素朴さと香ばしさがクセになる。
日本やアメリカのタコスは別物だ
日本やアメリカでよく見かけるのは、ハードシェルタコスと呼ばれるタイプである。
揚げた殻にレタス、チーズ、トマトを詰めた二つ折りスタイルが一般的だ。
これはアメリカ風の「テックス・メックス」スタイルであり、サラダのような感覚で食べやすい。
味の方向性としては、洋風ファストフードに近い。
トルテイーヤの素材も違う
メキシコでは、タコスの皮(トルティーヤ)には、とうもろこしの粉(コーントルティーヤ)が使われるのが主流である。
香りに特徴があり、少しクセがあるのが特徴だ。
しかし近年は、メキシコでも小麦粉のトルティーヤを使う店が増えてきている。
実際、自分も食べ比べてみて、小麦粉のほうがクセがなくて好みだと感じた。
日本人には小麦のほうが合うかもしれない。
具材はシンプルで奥深い
本場のタコスに入っている具材はとてもシンプルである。
基本は肉・玉ねぎ・パクチーの3点セット。
そこにサルサとライムをかけて食べるのが定番だ。
具体的には、以下のような種類がある:
- アル・パストール(豚肉のスパイス炙り焼き)
- カルニータス(豚肉の煮込み)
- バルバコア(羊の蒸し焼き)
- レングア(牛タン)やカベサ(牛の頭肉)などもある
チーズもレタスも入っていないが、素材の旨みとサルサの辛味が絶妙に絡み合って、これが実にうまい。
結論:どっちも良いが、まったく別物だ
アメリカ風のタコスはサクサクで食べやすいし、チーズやレタスもあって満足感がある。
一方で、本場メキシコのタコスはもっと素朴で、ストリートフード感が強い。
屋台で出てくるジュウジュウ焼けた肉と、パクチーの香り、ライムの酸味。
あの感じは、実際に現地で食べないと伝わらない空気感がある。
最近では、カルディや輸入食材店でトルティーヤやサルサも手に入るようになった。
自宅で“本場風”にタコスを作ってみるのも楽しい。
一度食べ比べてみると、「タコス」という言葉の中に、こんなに違う文化があるのかと驚くだろう。