ノースフェイスだらけだった冬の日
2022年の年末、近所のスーパーへ買い物に出かけたときのことだ。
人が多いなと思いながら店内を歩いていると、ふとあることに気づいた。
見渡す限り、ノースフェイスのダウンジャケットを着ている人だらけだった。
ざっと数えて100人ほどの買い物客のうち、8割近くがノースフェイス。
色違い、型違いではあるが、あまりの「同一感」に私は思わずたじろいだ。
同じブランドを着ていることで安心感を得る人もいるのかもしれない。
だが私は、その光景を見た瞬間、なぜか恥ずかしくなった。
ブームは同調圧力を生む
もちろん私もアウトドアブランドは好きで、ノースフェイスだけでなく他ブランドのジャケットも持っている。
軽くて暖かく、機能性も高い。冬の街着としては理想的だ。
だが、ここまで浸透しているとは思わなかった。
その出来事を友人に話すと、彼はこう言った。
「みんなが着ていると、持っていないと不安になる。制服みたいなもんだな」
なるほど、と思った。
流行とは、時に「持っていないこと」にすらプレッシャーを与えるものなのだ。
そして2023年の冬。様子は一変していた
年が明け、2023年の暮れ。
同じスーパーに買い物に行った。
あの時と同じように100人くらいの買い物客。
だが今回は、ノースフェイスを着ている人はたったの2人しか見かけなかった。
代わりに目立ったのは、シンプルなコートやボア素材のフリース。
あの特徴的なモコモコのダウンジャケットは、年配の方が着ている印象だった。
しかも、ブランドロゴが目立たないものばかりだった。
外出先でも周囲を観察してみたが、ノースフェイス率は確実に減っているように思う。
ノースフェイスブームは終わったのか?
「ノースフェイスはもう古い」
そう感じている人も少なくないのではないか。
そういえば以前、韓国でもノースフェイスが流行し、街中が「右も左もノースフェイス」状態だったという記事を読んだことがある。
もしかすると、あの人気もひとつのサイクルを終えただけなのかもしれない。
ブランドの戦略がうまかったという見方もあるだろう。
だが、ブームが去ったあとは“個性をどう保つか”が問われる。
流行が過ぎた途端に着づらくなる、というのもまた、現代的な感覚なのかもしれない。
だから私は今、着ないだけ
それ以来、私はアウトドアジャケットをキャンプ場以外では着ていない。
もっとも、冬にキャンプをすることもないため、ダウンジャケットはクローゼットの中に吊るされたままだ。
ただし嫌いになったわけではない。
軽くて暖かいという魅力は変わらない。
また数年後に、何の気兼ねもなく着られる日が来るだろう。
そのときは、街中で同じジャケットを着ている人がいようと気にせずに、羽織れるかもしれない。